第22章 寝起きにレモンフレーバー 十四松
「おれの…ですてぃにー……」
(く、くるしい…っ)
本当に寝ているのかと思うくらいキツく抱きしめられる。
腕を引き剥がそうとしてもビクともしない。
(じゅうしまつくんっ!!どこーー!?)
キョロキョロ左右を見回すと、抱きしめてくる誰松くんの背中からまた一つ寝ぼけて誰かが転がってきた。
「ッ!?」
新たな寝ぼけ松くんは、わたしを抱きしめている腕を強引に引き剝がし、壁に向かって誰松くんを蹴り飛ばす。
「グフッ!!??」
誰松くんが…動かなくなった…。
寝ぼけ松くんは、寝ながら向かい合わせになり、わたしにピタッと寄り添ってくる。
「……ねこかん…にぼし…どっち…?」
(どんな夢見てるの!?)
顔が近くてドキドキしながらも、必死に十四松くんかどうか確認する。
十四松くんより、髪の毛が少しホワホワしている気がする…。
(確率は5分の1…この人も、違う…!)
寝ぼけ松くんは、動物の毛並みに触れるみたいに頭をわしゃわしゃしてきた。
(なんかリラックス…って!そんな場合じゃない!)
一瞬心地よかったけど、すぐに我に返る。
引き離して立ち上がろうとすると、今度は後ろからギュッと抱きつかれた。
「ひゃっ!?」
「…むにゃむにゃ…あまえたい…あまやか…されたい……」
この声色も、十四松くんではない。
前と後ろからくっつかれて、胸の鼓動が飛び跳ねる。
悲鳴を出したいけれど、朝から下にいるご両親に心配をかけたくないという思いから、キュッと口を結ぶ。
(じゅうしまつくん…!)
心の中で彼の名を呼ぶと、不意に背中の甘え松くんがぶん投げられ、壁際でうずくまる誰松くんの上に重ねられた。
「じ、じゅうしま」
名前を呼ぼうとしたその時…
「あっ…!?」
甘え松くんを投げたその人は、後ろからわたしの胸を掴み激しく揉みだした。