第22章 寝起きにレモンフレーバー 十四松
主人公視点
初めて十四松くんの実家にお泊まりした日は、めくるめく夜を過ごした。
夕飯は豪華なすき焼き、お風呂に入った後はみんなと夜更かしポーカー、そして、よく分からないけれど、なぜか分裂して二分の一スケールで現れた十四松くんとの甘い時間……。
まるで、修学旅行最終日の前日のような、めまぐるしくも充実した、そんな夜だった。
・・・
(うーーん、よく眠ったーー!!)
布団から出て、伸びをする。
普段、自分のベッドではないと熟睡できないのに、松野家のお布団はとても寝心地が良くてグッスリ朝まで眠ることが出来た。
いや、それはお布団だけでなく、この家独特の、どこか昭和を彷彿とさせる懐かしい雰囲気——ノスタルジックな佇まいがわたしを包み込んでくれていたからかもしれない。
まだ誰も起きて来ないうちに布団をたたみ、服を着替え終えると、十四松くんのお父さんとお母さんが起きてきた。
「おはようございます!」
「あら早起きね、おはよう主ちゃん!うちのニート達とは大違い!」
「おはよう!しっかし、こんないい子がうちのじ、十四松のこ…恋人なんてなぁ!!信じられるか!?かーさーーん!!」
「信じられるわけないでしょっ!!とーさーーん!!」
朝一番に、なぜかわたしの目の前で抱き合いながら泣き出すご両親。
(ど、どうしよう…)
「えっと…顔洗いたいので、洗面台お借りしますねっ」
部屋を立ち去ろうとすると、お母さんに呼び止められた。
「じゃあ主ちゃん、ついでにニート達を起こしてきてくれる?お客さんが来ている時くらい、あの子達も早起きさせないとね」
「わかりました!では、いってきまーす」
明るい声で返事をし、フェイスタオルを持って洗面台へと向かった。