第21章 ※恋は桃色 トド松
抱きしめたまま覆い被さって来たので身動きが取れない。仕方なく、彼の背中に腕を回した。
「どうして…おバカさんなの?」
背中をトントンさするとようやく顔を上げてくれた。
「勝手にお店の常連っぽい男にヤキモチ焼いてた。バカでしょ?」
(やっぱり…)
男のお客さんと話している時、ずっとこっちを睨みつけていたし、そんなのはこちらもお見通しである。
機嫌を直そうと思い部屋に呼んだけれど…
「あははっ!本当におバカさんっ!」
思った通りで思わず笑ってしまった。
「あの人は奥さんも子供もいるんだよ?この間家族で食べに来てくれたし…」
「そうなの!?」
「そうなの」
イタズラっぽく返事をすると、クスクスと二人で笑い合った。
・・・
しばらく、他愛もない会話を続けていると、トッティがポケットから何かを取り出す。
「すごい偶然なんだけどね、はいっこれあげる」
「ありがとう!…リップバーム?」
フタを開けると、桃の香りがふんわりと漂った。
「ピーチかな?イイ香り!」
「ボクが使っているハンドクリームとお揃いの匂いなんだ。モモの葉の保湿成分が入ってるんだって」
「嬉しい…」
「ねぇ……塗ってあげる」
「!!」
指で塗ってくれるのかと思いきや…
トッティは自分の唇に塗り、
優しいキスをしてきた。
唇がゆっくりとこすれ合い、桃の甘い香りが広がっていく…。
「ん……んぁ…ふぅ…」
ねっとりとキスをされて、吐息がこぼれ落ちた。
「ねぇ、甘いだけがボクじゃないって…分かってるよね?」
そんなの、分かってる…。
言ったでしょ?
ココアのほろ苦さもトド松くんの一面だって…。
段々とキスが激しくなり、
ブラウスのボタンが一つずつ外されていく…。
桃の香りに包まれながら…
わたしは、彼の濃厚でどこまでも甘い愛撫に酔いしれていくのだった…。