第18章 お医者さんごっこ 一松
主人公視点
「へっくち!」
「ふふっ、何そのクシャミ」
一松くんがわたしの家に遊びに来て、ダラダラと二人で過ごしている。
彼は出かけるよりも、こうして部屋でのんびりするのが好きみたいだ。
もちろん、彼を独り占め出来るので、わたしもお気に入りの空間である。
それでも、たまに思いつきでいろんな所へ連れて行ってくれるのは、もしかしたら一松くんなりのサービスなのかもしれない。
今日も家で昼食を食べた後、動物園に行く約束をしていたのだけれど…
「…体温計…貸して」
「うん、ちょっと待ってて」
どうやら、体調がすぐれない様子…。
パタパタとスリッパを鳴らし、急いで救急箱から体温計を持ってきた。
一松くんの額に手をあてると、平熱とはとても言えない体温がわたしの手に伝わってくる。
「これは…風邪だね…」
「へっくち!……平気」
「だめ、動物園は中止。とりあえずうちで休んで」
ティッシュを差し出すと、鼻をかむ一松くん。
風邪確定である。
「ズズ…ッ……でも…」
「かわいい動物達にウイルスを撒き散らしてもいいの?」
「……」
わたしがそう言うとうつむき黙り込んでしまった。
やはり、動物…特にネコ科はかけがえのない存在らしい。
「風邪治して、元気になったらお弁当持って動物園行こ?ねっ?」
「…気が向いたら」
納得したみたいだ。