第78章 ※おまけ ありがとうを君に
次男の場合
「ハニー!!帰ったぜ!!」
「おかえりー」
コートを脱ぎながらカラ松くんがリビングへ来た。
帰って来るなりスーツ姿のまま腕の中に包み込まれる。
「あの、嬉しいけどご飯準備するからっ」
抱擁から逃れようと腕の中でじたばたすると、名残惜しそうに腕が解かれた。
「何か手伝うことはあるか?」
「ええと、じゃあバゲットをトースターで焼いてくれる?」
「フッ、お安い御用だ」
カラ松くんは得意げにトースターにバゲットを並べる。
その間、わたしはステーキを焼き始めた。
今夜はバレンタインなので、夕飯を少しだけ凝ってみた。
ステーキのデミグラスソースにビターチョコレートを混ぜてフレンチに挑戦してみたのだ。
スープとサラダも作り、ダイニングテーブルへ並べる。
飲み物を出そうとしていたら、カラ松くんがいつの間にかグラスを出し、わたしにワイン、自分にはぶどうジュースを注いでくれていた。
「おお…!今夜は素敵なディナーだな!ステーキだけに」
「ほら座って」
「…はい」
乾杯していただきますをする。
「見ろ主、ミートがオレにミートして嬉しそうに微笑みかけている…!」
「はいはい」
最近、カラ松くんて天然だよなと思い始めた。
よく万物と会話をしていたり、この間は野生の鳩に向かって、オレの愛を世界中に届けるオレ専用伝書鳩とか言い放っていた。
以前、トド松くんがナルシスト通り越してサイコパスと言っていたのはこういうことかと、今更ながらに納得している。
「すまない…嬉しくてつい冗談がポロポロと…フッ、お前相手だとどうにも調子が狂ってしまう」
「喜んでくれてわたしも嬉しいよ…ありがとね」
珍しく赤くなっているので、釣られてこちらまで照れてしまった。