第15章 話す【side 水戸部】
話しの流れで電車が苦手な理由を聞くことになった…。
「聞きたくなくなったら止めてくれていい」
そう、前置きして話しはじめた陽向の話しは、高1男子の俺達にはキャパオーバーで「変な話し聞かせてごめん」と立ち去る陽向に、皆、何も言えなかった。
もちろん、俺も…。
ただ、初戦の時にあれだけ顔を青くしていた理由が、俺が腕を引っ張ったとき小さな声で『嫌』と抵抗した理由が、やっとわかって、
話してもらえる位に陽向が心を開いたのかという安堵感と、
もし、自分の妹に同じ様な事があったら…と考えて、『許せない』という怒りがこみ上げる。
午後からの皆は、やっぱりよそよそしくて、気まずそうで、
それは陽向も同じで…。
逃げるように帰る陽向の背中を眺めながら、「明日、陽向来るかなー?」と小金井が呟いた。
「えっ?」と皆で焦る。
来ない?
あり得るかもしれない…。
「大丈夫か?」という伊月に、
「気にするだろうな。陽向なら」と答える土田。
「追いかけるか?」
「でも、どうするんだよ…。捕まえた所で何言ったらいいか、わかんねぇぞ」
日向が頭を抱えている。
俺もどうしたらいいかわからない。
ただ、無理に話しをさせたのは俺達なのに、あんな態度をとってしまった。
陽向ならものすごく気にするだろう。
思いつめるだろう。
それだけはして欲しくない。
もしかしたら、事態を悪化させてしまうかもしれないけど、
気にしなくていい。
話してくれて嬉しかった。
思い詰めなくていい。
そう、メールを送った。
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ありがとう。心配かけてごめんね。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
届いた返信に、ほっと胸を撫で下ろす。
彼女からのメールを小金井に見せれば、
「返事来てよかったなー」
と、笑っていた。
嫌な思いをさせてしまったお詫びに、陽向にしてあげられる事は無いだろうか?
少し考えて…
木吉が入院してから、陽向はいつも一人で帰っていることを思い出して、
再び、彼女にメールを送った。