第10章 開く
…昨日はなかなか眠れなかった。
上手く寝付く事が出来なかった。
眠い目をこすりながら、目的地まで歩いていると、
「陽向ー‼おっはよー‼」
後ろから飛んで来たコガの声。
明るい彼の声にボーッとした頭も覚める。
「おはよう、コガ。水戸部もおはよう」
挨拶代わりにニコリと水戸部が笑った。
向かう先は一緒なので、3人で並んで歩く。
今日の朝練はリコんとこのジムのプールでやるらしい。
私ははじめてだ。
『私達は入らないけど、ちょっと濡れるかもしれないから水着持ってきた方がいいわよ』
そう、リコが言っていた。
持ってないし、あってもやっぱり着ないんだけど…。
水着なんて、からかわれた記憶しかない。
「おーい。陽向ー?なにやってんのー?入るよー」
ジムの前で足を止めた私を促すように声をかけたのはコガ。
「あっ、ごめんね。水戸部、ありがとう」
扉をあけて、待ってくれていた水戸部にお礼を言って、
「「おはようございます」」
挨拶をしながら3人で扉をくぐると、日向と伊月が既に中に居た。
「おはよう」
奥から、リコの声がする。
「碧、水着持ってきた?着替えるなら、女子の更衣室はこっちよ」
「…うん。私は、Tシャツとハーフパンツでもいい…かな?」
「いいけど、濡れるかもよ。私の貸そうか?」
そう、リコが申し出てくれたけど…。
「うーん」
「何よ」
「リコの水着じゃ、私は入らないと思うの…」
私とリコはそれなりに身長差があるし、私よりリコの方が細い。
だから、入らないと思う…
そう伝えたかったのだが、やり取りを聞いていた男子たちが、私とリコを見比べて「あぁ~。」と呟く。
彼らの目線は顔じゃない…。
「ちょっと、あんたたち!」
リコがキレた。
私は苦笑い…。
一通り成敗したらしく、「本当、失礼しちゃうわね‼」と怒るリコは、私を連れ更衣室に向かった。