第7章 帰り道
家に着くと、既にお兄ちゃんは帰宅していた。
「遅くなってごめん。今からごはん作るね」と笑ってみせたが、泣いた後なのはばれているだろう…
清志くんを引っ張って、リビングから出ていった。
ぼそぼそと話し声が聞こえて、バタンと扉の閉まる音がする。
「清志は帰ったから、あいつの分はいらないぞー」
お兄ちゃんが戻ってきた。
手を止めず、視線は向けずに、「わかったぁ」と返事をする。
「これ、忘れ物だって。机に置いとくな」
くしゃっと頭を撫でられる。
「先に、風呂入ってくるー」
そう言って、また出ていった。
お兄ちゃんの足音が消えた後に振り向くと、ヘアピンが置いてあった。
修学旅行のお土産で清志くんにもらったやつ。
ガラス玉の飾りが綺麗で、気に入っている。
それに…
私の気のせいかもしれないけど、
私がこれを着けていると清志くんの眉間の皺が緩む。
いつもより穏やかな顔で笑ってくれる。
そんな気がする。
昨日、伯母さんの家で結び直した時に外して、そのまま忘れてしまったんだろう…。
(わざわざ届けてくれたのに嫌な思いをさせてごめんなさい…)
こころの中で呟いた。