第66章 伝える
「ありがとう」
ペンを持つ凛の手に、自分の手を添えた。
コトンとペンがノートの上に転がって、二人の指が絡まる。
ぎゅっと手を繋いでお互いに微笑み合うと、繋いだ手と反対の手のひらが私の頬を包んだ。
凛の親指が唇を撫でる。
先程の表情と同じ。
捕らえられた視線が離れられずに、吸い込まれそう…。
グイッと引かれた身体を、まるごと凛に預けてしまえば、包まれるあたたかさに強く心臓が脈打つ。
さっきからドキドキしっぱなしだ。
そっと、目を閉じると…
唇が重なった。
触れるだけの優しいキス。
一度唇が離れると、
今度は触れるだけではなく、はむっと啄むようなキス。
驚いて目を開けた。
ニコリと微笑む凛。
コツンと互いの額を当てて、触れ合える幸せを噛み締めた。