第7章 帰り道
「おーい」
腕を掴まれたまま進む私達を木吉が追いかけてきた。
「途中まで、俺も行く」
コクンと水戸部が頷いた。
今なら、言えるかも…
「あ、あの…。逃げ…ないので、腕を、離してもらえると…」
ボンッ‼という音をたてる勢いで、水戸部の顔が赤く染まり、ペコペコと何度も頭を下げた。
さっきの強引さから印象がガラリと変わる。
そんなに、頭を下げられると逆に申し訳ない…
「ははは。水戸部ー。陽向が困ってるぞー」
チラッと水戸部がこちらを見て、頭を上げたかと思えば、コテンと首を横にかしげる。
『許してくれる?』と言っている様な気がした。
「あ、あの…。許すか?って聞いて…るのかな?私、お、怒ってないよ。大丈夫だよ」
そう笑いかければ、下がっていた眉が戻ってニコリと笑う。
中庭で見た、穏やかな表情。
無口だとは聞いたけれど、その分表情が豊かな人だ。
向かい合ったまま立ち止まった私達を促すように「行くぞー」と木吉から声がかかり、揃って歩き出す。