第64章 持ち直す
「コガ、お疲れ様」
タオルを被って、顔を伏せているコガの肩をポンっと叩いた。
反対側の肩には凛の手が乗っている。
『分かった所で絶対に止められない』という6番のシュートに飛び付いたコガ。
驚いた実渕くんの顔がみえた。
それでも…
やはり…
実力差も身長差もあってブロックは届かず、ボールはゴールへと放られた。
「落ちろー」と皆が叫ぶが、ボールはリング内を回転してネットをくぐる。
第3Qが終わり、肩を落としたままのコガがベンチに戻って来た。
ベンチでは、コガのおかげで3種のシュートの違いと攻略法が分かったと話す日向。
「力不足で…」と謝るコガに「お前の分までギャフンと言わせてきてやる」と二人が拳を合わせた。
「おう、任せた。頼むよ、日向」
そう、答えていたコガだけど…
きっと、悔しいだろう。
そんな友人の気持ちを察するように、凛はコガの頭にタオルを被せた。
そのタオルが、ポタポタとこぼれる涙を隠す。
「凄かったよ。かっこよかったよ」
私が声を掛けると、
「そうゆう事言うと、水戸部の機嫌悪くなるからヤメロよー」
と、いつも明るい彼は、
涙を拭って、
ちょっとからかうように笑う。
目線を移すと凛と目が合って、お互いにコクンと頷いて、私はその場から離れた。