第62章 絡まる
決勝戦当日。
スカウティングの為に家を出た。
体調は悪くない。
凛とはまだだけど、清志くんとはちゃんと話が出来て少し気分も晴れた。
エントランスを出て「ふーっ」と大きく息を吐くと、トントンと肩を叩かれた。
「えっ?凛?」
凛に送ってもらう事はあっても、迎えに来てくれた事はない…。
『一緒にいこう』
そう差し出された手に、若干戸惑いながら自分の手を重ねた。
そのまま手を引かれて歩き出す。
「わざわざ来てくれたの?」
コクンと凛が頷く。
「あ、あの…。昨日の…」
言葉を制する様に唇に凛の人差し指が当てられた。
静かに首を振る姿は、
『その話しはしないで』という、
『今は試合に集中したい』という、
凛の意思表示だ。
コクンと頷くと頭が撫でられて、一度、ぎゅーっと強く抱きしめられた。
身体が離れると、また私の手をとって歩き出す。