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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第61章 向き合う


もう、逃げない。甘えない。
そう決めた。

このまま誤魔化すのは、
無かった事にしようとするのは、
凛にも清志くんにも不誠実だ。



「何?」

「俺…。今日、アイツと…」

「知ってるよ。凛、機嫌悪かったし…。何を話したの?」

真っ直ぐに清志くんを見据えた。


「アイツの方から寄って来たんだ。碧が電車で過呼吸起こしたから、どうしたらいいかって、ケータイ出して聞いてきた。お前、大丈夫だったか?」

清志くんの問いに頷いた。

凛の優しさに胸が痛む。
しゃべらない凛にとっては、他校の先輩に聞くなんて勇気のいる事だったんじゃないかと思う…。
それでも、私を心配して行動してくれたんだ。


「アイツ、しゃべらねぇ奴とは合宿のときに聞いたけど、本当にしゃべらねぇし。何も知らねぇで俺に聞いて来るとかイラついて、睨み付けりゃオロオロし出すし。だから、聞かれた事の答えと一緒に昨日の事とか、お前にも話した事とか色々話して…。んで、無理だから別れろって…」

つい、顔を歪めた。

「悪かったよ…。最後のはあんまりイラついて、つい、言っちまっただけだ。でもよ…碧。昨日も言ったけど、俺、お前が…」


頬に伸びてきた清志くんの手を払った。

「嫌いじゃない。好きだよ清志くんの事。でも、それはお兄ちゃんとか裕ちゃんの好きと一緒だから…。ただ、凛は違う。私にとっては特別だから…だから…」

逃げないと決めたのに泣きそうになって、下を向いてしまった。



「わかった。顔あげろよ」と清志くんが私の頭を撫でる。



「引くつもりはねぇから。お前がこっち向くまでな。だから覚悟しとけ」

そう言って、ニカッと笑う清志くん。

小さいときは私のヒーローだった。
もしかしたら、
私がちょっと見方を変えていたら、
特別になったのは清志くんだったのかも知れない…。


「ごめんなさい」
つい口に出た言葉。

その言葉に

「謝ってんじゃねぇよ。引かないって言ってんだろ?じゃ、俺、帰るわ。ちゃんと、メシ食えよ。明日決勝だそ!」

そう返して、わしゃわしゃと私の頭を撫でると、リビングを出て玄関に向かった。

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