第58章 切り替える

コート上の降旗と、
それを応援する福田と河原を見て、

河原が『やめようかな』と呟いていたときの事を思い出した。


あのとき、私は何も出来なかった。
何も出来なくて、逃げ出した。


本当に、誰かがやめてしまうんじゃないかと思った。


でも、彼等は今、ちゃんと誠凛のユニホームを着て、ベンチに座っている。

そのうちの一人は、コート上に立っていて、はじめての公式戦で相手校のキャプテンを前にしている。
皆のサポートをしている。


本当に、彼等がやめなくてよかった。

一人も欠けずにWCに来られてよかった。


ゴールを決めた降旗を見て、
黒子と火神にハイタッチをする姿を見て、

私もたまらず、福田と河原に手のひらを出した。

自分の事の様に嬉しそうな二人から、
ﾊﾟﾝｯと控えめなタッチが返された。