第55章 彷徨う
家のドアをガチャリと開けて、静けさに戸惑った。
(そっか、お兄ちゃんいないんだった…)
合宿だったか、何だったか、数日留守にすると言っていた気がする。
頭の中のモヤモヤをぶつける相談相手が居ない事を知って、「はぁー…」とため息をこぼした。
静かな部屋の中が辛い。
早くお風呂に入って寝てしまおう。
そう思って、入浴を済ませ、ベッドに潜り込んだけど…。
目を閉じると、清志くんとの事が頭の中に浮かぶ。
自分の唇を指で撫でて、
意味なんか無いのにパジャマの袖でゴシゴシ拭いて、
ため息をついた。
胸が痛い。苦しい。
「…なんで?」
呟いた問いかけに応じるかの様に、枕元のケータイが着信を知らせる。