第53章 揺さぶる
無事に勝利で終わった陽泉戦の後、
月バスの取材を受けたとリコから聞いた。
皆が並んで写真を撮られている姿に顔が綻ぶ。
その中に凛が居ることに、なお表情が緩んだ。
(凄いね。よかったね)
緩みっぱなしの顔を隠す様に皆から離れた所から眺めていると、誰かに肩を叩かれた。
「碧、ちょっと来い」
誰なのかは声でわかった。
私にとっては聞き慣れた声。
でも…
「えっ?ちょっと…」
振り向く間もなく、腕を引かれて、半ば強引に清志くんに連れて行かれる。
試合後、まだ着替えていなかった私は、いつものハーフパンツに選手と同じSEIRINと書いてある練習着。
私の腕を引く清志くんは秀徳のオレンジのジャージ姿。
端からみたら不思議な組み合わせだろう…。
ちょっと目立っているみたい。
周りの視線が痛い。
「清志くん?」
反応がない…。
「どこいくの?私、皆と次の試合…」
「うるせーよ。黙ってついて来い」
そう言われてしまっては言い返すことは出来なくて、大人しく清志くんの後に続いた。