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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第5章 勧誘


「俺は陽向がどんくさいとは思わない」

木吉が話しはじめた。



「陽向って、よく周りを見てるよな。他の女子が高い所に手が届かなくて困ってると変わってやったりとかするし、荷物運んでたりすると手伝ってる」

思ってもみない評価に、ぽかんと口が開く。


「そ、それは当たり前…じゃ、ないかな?」

思わず木吉に問いかけた。


他の子は私より背が低いんだから、高い所は届く私がやるべきだし、重い荷物は二人で運べば、重量が減る。




「本当は男子がやるべきなんだけどな…」と呟きが聞こえた。


「仕事押し付けても、嫌な顔しないから、先生達も結構、陽向に頼むしな」


木吉の言葉は続く。

「陽向の周りはきっと、賢いし器用な奴が多いんだろうな。プレー中の勝手なイメージだけど、お兄さん、なんとなく、そんな感じするしな」

(お兄ちゃんの事知ってるんだ…)

「きっと、その従兄弟も似たような感じなんじゃないか?バスケやってるんなら、運動神経いいんだろ?そうゆう奴と比べたら、そりゃ『どんくさい』ってなるだろう」

いつもの穏やかな顔は消え、
ゆっくりとこちらを見据えて木吉はしゃべる。


「確かにちょっと大人しすぎるなとは思う。いつも思うが、嫌な事は言い返したほうがいい。でも、自己主張が苦手なのは陽向の元々の性格だろ?しょうがないんじゃないか?その従兄が言うような『どんくさい』とは違うんじゃないか?それに人には手を貸せるけど、自分が困った時は一人でなんとかしようとするよな?そうゆう時は、ちゃんと人を頼ればいいとも思う。ちょっと危なっかしい所も確かにある」


笑みを浮かべながらも、木吉の目は真剣だった。


「でもな、周りをよくみていて、すぐ気がついて、人に手を貸せる。そうゆう奴はマネージャーに向いてると思うぞ」


最後の言葉が、すとんと胸に落ちてきた。
正直、嬉かった。
今まで、『ダメだ』『ダメだ』と言われて手を貸してもらうばかりだったから、そんな風に言ってもらえるなんて…
そんな風に自分を見てくれていたなんて…

本当に嬉しい。


「…今日、見学行ってみようかな」

そう呟くと、


「おう!」といつもの顔で木吉が笑った。
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