第49章 休める
「温泉にいくわよ」とのリコのひとことで、私達は温泉旅館に来ている。
ロビーでチェックインを済ませて、旅館の部屋で荷物の整理をしていた。
「碧、お風呂行かないの?」
「ごめん、もうちょっと」
「先にいくわよ」
「えっ?待っ…」
引き留めるも空しく、リコは部屋を出て行ってしまった…。
リコに遅れてお風呂へ向かうと、入り口のベンチで誰かが寝ているのが目に入る。
(あれ?黒子?)
側の自販機には火神の姿。
「どうしたの?」
火神に声をかける。
「黒子が逆上せたんで、付き添いっす」
「大丈夫?飲み物いる?冷すもの持ってこようか?」
「俺、外で飲み物買ってくるんで、陽向サン居てもらっていいですか?」
「うん。わかった」
しゃがみこんで、黒子の目元にあるタオルに触れてみる。
(冷たいから大丈夫かな?)
「黒子、気持ち悪くない?」
「大丈夫です。すみません」
黒子がそう言うと、背後から影ができて、「ほらよ」とジャグが置かれた。
誠凛の誰かだろうと振り向けば、思いもよらない人物に絶句する。
(なんで居るの…?)