第48章 手にする
終了のブザーが鳴って、ハラハラとした試合が終った。
「勝った…」
ずっと、強ばっていた身体が痛い。
「ふぅー」と大きく息を吐くと、日向と木吉が向かい合うのが見えた。
パーン‼と小気味よい音が響いて二人がハイタッチをする。
その姿を見て、
小さな事で子供みたいな喧嘩をしていた彼等を思い出して、
リコと顔を見合わせた。
『よかったね』
言葉にしなくても思いは同じだ。
お互いに目にたまる涙。
引き寄せられるように、
手を伸ばしてリコと抱き締めあった。
「勝ったわね」
「うん。勝った」
76‐70で誠凛は霧崎第一に勝った。
WC出場の切符を手にした。
リコから離れると、喜ぶ皆の間を縫って凛がこちらへやって来る。
途中から木吉と変わってCに入った彼はユニホーム姿。
ニコリと笑って向けられた手のひらに、私も手のひらを合わせて答えた。
凛じゃなきゃ良いと言うわけでは無いけど、
こんな事を思うなんて本当はダメなんだけど、
それでもやっぱり不安だった。
特に中のラフプレーが酷かったから、
今度は凛が集中的にやられちゃうんじゃないかって…。
(心配したんだよ。本当に…)
口には出さない思いも込めて、
パンッと控えめな音が私達の手のひらから鳴った。