第43章 変わる
夏休みが終わり、二学期。
うちのクラスは開始すぐに席替えをした。
残念ながら凛とは離れてしまったけど、私の隣は伊月だ。
彼のお得意の『キタコレ!』には部活の時と同じく、笑顔で聞き流す事にしている。
正直、隣が伊月でちょっとほっとした。
やはり、クラスメートには苦手なタイプの人もいる。
その人達に囲まれたら内心穏やかではない。
失礼な事を言ってるのは分かってるけど…。
放課後まであと1限という休み時間。
次は自習だからと、皆が浮かれていた。
「陽向ってさー」
椅子に跨がり、伊月と向かい合って座る男子に呼ばれてそちらを向く。
「そうやって座ってて、普通にしてれば、結構モテそうだよな。立ち上がるとアレだけど…」
「え、えっ?…あの。えっと…」
「ほら、そうやって固まるから残念なんだって」
と彼は笑う。
「最近、クラスに慣れてきて普通になっただろ?変わったよなーって思ってさ。陽向さ、優しいし、見た目も悪くないからモテそうだなーって。まぁ背が高すぎるのは難点だけどさ。難点なだけで、気にしなきゃいい話だし逆にスタイルいいよなーって言ってる奴もいるしな。そう考えると早めに手をつけた水戸部は正解か…。ってか、水戸部なら陽向の身長とか気にしなくていいのか…」
「なぁ、そう思わねー?」と伊月に同意を求める。
「俺に聞くなよ」とため息をつきながらも、「おどおどするの止めればいいのにとは思う」と伊月が答えた。
「もっと、自信持てばいいんだぞ」と。
どう反応したらいいか分からなくて、曖昧に笑って、伊月達から顔を逸らすように辺りを見ていると、堀内くんが困っていた。
掲示物を貼りたいが、届かないらしい…。
「椅子使うか…」なんて呟きが聞こえたので、席を立って、「変わるよ」と声をかけた。
「助かるわ。僕じゃ届かない」
悲しいかな、私は少々の背伸びで届く。
「日直だっけ?」
「違うよ。日直はあそこ」
彼が教室の一角を指差す。
チャラチャラと言うか、何と言うか…。
私はちょっと苦手なタイプの人達がいた。
4月当初は、よくからかわれた。
無事に貼り終えると、「ありがと」と言う堀内くんが、こちらをまじまじと見て、口を開いた。
「陽向さんて、もしかして背伸びた?こんなに高かったけ?」
「あ、あの…。えっと…」