第38章 行き交う 【side宮地】
『いつまでかかってんのよ!早く戻ってらっしゃい‼』
女監督さんはご立腹の様子だ。
こっちまで丸聞こえだぞ。
「あ、あの…」
遠慮がちに碧が口を開けば、
「否、いいんだ。引き留めて悪かったな」と、大坪が言った。
「いえ…そんな…。あの…木村さんスイカ美味しかったです。ご馳走さまでした。皆さん、お邪魔してすみませんでした。失礼します」
そう言って、頭を下げて走り出す。
バカ‼走るなよ。
オマエ、どんくさいんだから。
「走るな!転ぶぞ‼」
俺がそう言うと、碧が振り向き、もう一度頭を下げて、やっぱり走って行った。
(だから‼走るなって‼)
「宮地、顔。締まりねぇぞ」
木村が俺をつつく。
「てか、宮地さん。碧ちゃんの前だと、『轢く』とか『刺す』とか言わないんすねー」
高尾、マジで投げんぞ‼
「うっせーよ‼高尾‼いくらアイツが良いって言ったからってな、気安く呼んでんじゃねぇよ‼アレでも、オマエの1個上だぞ‼先輩だぞ‼」
「『気安く』とか…。
宮地さん、お父さんみたい…。だって、碧ちゃん、先輩っぽくないっすもん」
そう、ケタケタと笑いだした高尾には、先日と同じく蹴りを食らわしておいた。