第37章 行き交う
「す、すみません。あの…お世話になります」
車の中でリコのお父さんに頭を下げると、「気にしなくていいぞ」と笑って「航からも頼まれた。心配してたぞ」と続けた。
「そうですか…すみません」
心配なのはわかるけれど、お兄ちゃんが過保護すぎていたたまれない…。
「見た目は航そっくりだが、性格は正反対だな」
ハンドルを握りながら、リコお父さんが呟く。
「よく言われます」
「そうか。そういや、航は実業団か?」
たぶん、お兄ちゃんの卒業後を言っているんだろう…。
「目指すと言っていました。声がかかれば何処へでも行くと」
「あぁ、そうだよな…。お前ら二人暮らしだろ?」
「はい。そうです」
「来年、一人になるようなら、遠慮なく頼っていいからな。可愛いリコたんのお友だちなら大歓迎だ」
そう言ってケラケラと笑う影虎さん。
見た目は、ちょっとアレだけど、優しいお父さんだと思う。
私はあまり、父と仲良くない。というか、父が忙しくて触れあった記憶があまりない。
リコがちょっと羨ましくなった。
「眠たかったら寝ていいからな」
寝てしまうのはとても失礼な気はしたんだけど、身体の疲れには抗えず、その言葉に甘えて、ゆっくり目を閉じた。