第37章 行き交う
「暑い…」
砂浜を走る皆を見ながらそう呟くと、人一倍元気な部員が足元で尻尾を振る。
「君は暑くないの?大丈夫?」
しゃがみこんで、二号の頭をわしゃわしゃと撫でた。
今は夏休み。
海での合宿がはじまった。
皆が合宿場所に着いてすぐ、体育館に向かうのに『待った』をかけたリコが連れてきたのは、先程、リコのお父さんがゴールを設置してくれた浜辺。
いつもの体育館とは違い、日差しがジリジリと照りつける。
砂浜を走る皆の方が暑いのは分かっているけど、見ているこちらもやっぱり暑い。
「休憩よ。水分補給、しっかりしてね」
リコから休憩が告げられると、
「「「あちー」」」
という言葉が口々に皆の口からこぼれて、着ていたTシャツを脱ぎ出す。
片手にTシャツを持ちながら、タオルやドリンクを受け取りに来る皆を見て、
「男子はいいなぁ」
なんて独り言ちた。