第31章 募る
「転んだんですか?」
何故か遠慮がちに私の膝を指差す降旗と福田に
「うん…」と返事をした。
急ぐ為に走ったのに、転ぶなんて…
自分のどんくささに呆れる…。
バタバタと凛が走って来て、眉を下げながら首をかしげた。
きっと『保健室いく?』と言ってるんだろう。
「大丈夫。ちょっと擦りむいただけ」と答えて、
「練習は?」と聞けば、聞こえるのはリコの声。
「終わったわよー」
やっぱり…
覗いた瞬間に、そんな雰囲気は感じていた。
「今から昨日のやるけど、碧も少しだけ参加して。まぁ、とりあえず消毒してらっしゃい」
リコが私の膝を指差す。
「うん…」
返事をして歩き出せば、当たり前の様に凛がついてきた。
「えっ?凛…?やることあるでしょ?一人で大丈夫だよ」
私の言葉に彼はフルフルと首を横に振る。
「大丈夫だから。本当に」
もう、1度断ったのだが、凛は頑なだ。
そんな私達に、
「もう、しょうがないわね」
と、リコからのお許しが出て、二人で揃って体育館を後にした。
体育館から離れると、
隣に並んだ凛の手がすっと伸びてきて、
いつもよりも少し強く、
ぎゅっと私の手を握る。
そのまま手を繋いで保健室までの短い道のりを歩いた。
うぬぼれかもしれないけど…
なんだか凜に
『寂しかった』と言われている様で、
『私も』という意味を込めて、
凛の手をぎゅっと握り返した。
やっぱり、この人が大好きだと思った。