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【刀剣乱舞】独り占めは二人で

第1章 独り占めは二人で


では、お言葉に甘えて、と今剣に役目を譲ってから、岩融に礼を言う。
「礼には及ばん……ふむ、確かに少々雑であったか。髪にもあちこち葉が」
その言葉と共に岩融の大きな手が、に向かって伸びてくる。いつも、彼は威圧感を与えないようにと、彼女に近寄るときは少し身を屈める。それでも、そんな時は少しだけは身をすくめてしまう。怖いのではない。普段離れている彼の瞳と自分の瞳の距離が近づくのがどことなく気恥ずかしいのだ。
と、帽子を被ってなくても、岩融の大きな体でに影が落ち、光が遮られた。
髪についた葉を大きな指が摘まんで軽く引く感触。
(あんなに適当に枝を切るのなら、頭を振れば落ちる、とか言いそうなのに)
それに少し戸惑いつつも、任せていれば
「ここにもついているぞ」
「え……っん!?」
断りもなく首筋からうなじに太い指が差し込まれ、けれど、爪先で傷つけぬようにそっと髪と髪の間を指の腹で撫でられる。
「いっ……」
はぞくりと体を震わせ、反射的に彼の名前を発しそうになった。その瞬間、岩融の顔が近づき、ついばむような口づけでそれは阻まれる。
軽く下唇を甘噛みされるだけの、決して官能的でもなく、けれど決して子供のものではないキス。
触れた時間は短いのに、うなじの後ろに差し込まれた指はするりと彼女の首筋を撫で、名残惜しそうにゆっくりと離れていく。
最後に、本当は痕を残したい、けれどそれは出来ない、と言いたげに軽く、本当に軽く爪の先を滑らせて。
「いわとおし!ずるいですよ!だましうちではないですか!」
「おお、今剣、気づいておったか、ははは」
「ははは、ではないですよ!」
「いっ、岩、融っ」
恥ずかしさに頬を紅潮させ、両手で髪を撫でて葉っぱがついていないかを確認する――そうでもしないといてもたってもいられなかったのだ――。
すると、今剣がストローハットを両手で持って、岩融を押しのけるようにの正面に笑顔で立った。
「あるじさま、ぼうしきれいになりましたから、ぼくがかぶせてさしあげます」
「今剣、ありがとう……」
今剣の方がよりも小柄だ。礼を言いながら軽く膝を折って頭を少し突き出せば、ストローハットはふわりと頭に乗せられる。
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