第6章 Sixth sense
廃城に戻ると、与一さんが事の詳細を話してくれた。
私と信長様が脱出してからもやはり豊久は引かなかったらしい。
「もうねー…大変だったんですよ。
斬り合いなんてもんじゃなくて、
お豊(トヨ)ってば完全に組み打ち始めちゃうんだから。」
与一さんは呆れたように息を吐いた。
そ……そうなんだ。
でもそのお陰で傷が浅かったのかもしれない。
土方歳三に斬られていたら、豊久の命は無かったのかもしれない。
そして私はずっと心に引っ掛かっている事を聞いてみる。
「あの……それで…土方歳三は……?」
一瞬、与一さんの目が暗く澱んだ。
「彼奴は逃げたよ。」
「逃げた?」
「あの要塞が崩れ始めた途端にね。
またラスプーチンとか言う奴が現れて……
『引き際だ』ってね。」
「ふむ……
潮目を見極められるとはの。
どうやら戦の本質を熟知している様だにゃあ、彼奴等は。」
そう言った信長様は考え込む仕草を見せた。
「土方某は納得入って無いみたいだったけど……。
勿論、お豊(トヨ)もね。
『逃がさんど』って追い掛け出したのを
必死で押さえ込んで漸く連れ帰って来たんだ。」
「ありがとうございます、与一さん。」
頭を下げる私に与一さんはニッコリと笑ってくれた。
「ううん。
それにその後直ぐ、意識を失ってくれたから助かったよ。」
本当に与一さんも豊久も無事に帰って来てくれて良かった。
私が胸を撫で下ろしていると、信長様が低い声で呟いた。