第6章 Sixth sense
そんな私達を不審そうに見つめる菅野直に私はまた近付いた。
彼にどうしても告げたい事がある。
「許嫁がいらっしゃるんですね。」
「おう。
俺の帰りを待ってる。」
「その方の為にも……絶対に死なないで下さいね。
待ってる人を絶対に泣かせないで。
どれだけ心配を掛けてもいいんです。
そんな物は無事な姿を見れば吹っ飛んでしまうから。
でも、帰って来ないのは駄目です。
あなたへの想いを、行き場を無くして
彷徨わせたりはさせないであげて下さい。
お願いします。」
真剣に、そして滔々と語る私を3人はじっと見つめていた。
こんな偉そうな事を言ってしまって良いのだろうかとも思ったけれど、それでもどうしても伝えられずにはいられなかったんだ。
豊久を失ってしまうかも…と思った時、私はとてもとても怖かったから。
無言で私を見つめ続けていた3人が同時に破顔した。
「じゃあ…手前ェの元にあの侍を無事に届けられた事を
誇りに思わなきゃいけねェな、俺達は。」
菅野直のその言葉に、私はもう一度深々と頭を下げた。
その後、廃城から出て来た信長様、与一さんと共に3人を見送った。
「じゃーな、サムライ共。
死ぬなよ。」
乱暴だけど温かい言葉を残して去って行くあの人達も全員無事でいて欲しい……
私はそんな想いを抱きながら荷車に乗って走り去って行く彼等を見つめていた。