第6章 Sixth sense
「豊久……豊久……」
私はその傍らに跪き、名前を呼びながら豊久の頬を両手で何度も撫でた。
「大丈夫だ、。
呼吸も安定しておる。
目を覚ます迄、待つしか無かろう。」
「………はい。」
信長様の言う通り、豊久は只眠っているだけのように見える。
撫でる頬も温かくて、漸く私は人心地付く事が出来た。
北方へ戻ると言う彼等を見送る為、私が外に出ると西部劇風の2人が名乗ってくれた。
「俺はブッチ。
ブッチ・キャシディだ。」
「ザ・サンダンス・キッド。
ヨロシクな、お嬢さん。」
この2人………もしかして……
あの映画のモデルになった人達じゃないのかな?
あのポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが出演してたアメリカ映画。
私が生まれるずっと前の映画だけど、傑作西部劇として映画史に残る……
「明日に向かって撃て……」
私がついその映画のタイトルを呟くと、2人は目を瞬かせてから大声で笑い出した。
「いやぁ……粋な台詞だねぇ、それ。
俺達も使わせてもらっていいか?
なあ、ブッチ。」
「全くだ。
でも俺達にゃ、どこに行ったって
明日なんてねえけどな。」
カラカラと笑い続ける気さくな2人に私の頬も緩む。