第5章 Burning quintet
戦闘機は一層高度を下げ、私と信長様が草むらに転がり落ちたのを確認するとまた一気に上昇を始めた。
そして大きく旋回し、私達が居た国境要塞の方へ戻って行く。
叩き落とされた衝撃で全身に走る痛みに顔を顰めていると
「ッ!」
背後からサン・ジェルミさんが私を呼んだ。
「無事だったのね。」
「サン・ジェルミさん!」
私はサン・ジェルミさんに駆け寄りその両手を握る。
「良かった。
サン・ジェルミさんも無事だったんですね。
本当に良かったぁ。」
笑顔でそう告げるとサン・ジェルミさんはクッと表情を歪ませ突然私を力一杯抱き締めた。
「く……苦しいです。
サン・ジェルミさん………」
サン・ジェルミさんの大きな身体に息が出来ない程ぎゅうぎゅうと締め付けられ私は身を捩る。
「あなた……馬鹿ね。
自分が拐われたクセに私の心配するなんて……
本当に馬鹿なんだから!」
サン・ジェルミさんに馬鹿と言われた事がこんなに嬉しいなんて。
豊久も同じ気持ちだったのかな。
暫くしてサン・ジェルミさんの力強い抱擁から解き放たれた私は、背後の空を見上げて聞いてみた。
「あのっ……あれ………
あの戦闘機を操縦してるのって……」
「勿論、漂流者(ドリフ)よ。」
サン・ジェルミさんの低い声が響く。