第5章 Burning quintet
瞬間、風を切る鋭い音が鳴り私と土方歳三の間に火柱が上がる。
「何……だとっ?」
土方歳三は驚いて身を翻し、私との距離が拡がった。
「ジェルミの情報力を甘く見るな。」
焔の向こうから豊久の声が響く。
「与一の腕を甘く見るな。」
「火矢か……。
那須与一……何処から放っている?」
「主(ぬしゃ)が与一の居所を探し当てるより先に
俺(おい)の指した先を与一は確実に射抜くど。」
「それにこの臭い……火薬か?
火を持ってして敵を攻め立てる……
信長公の常套手段だな。」
………与一さんと信長様も来ているの?
私の心は否応無く逸る。
焔の向こうの豊久と土方歳三の姿は良く見えなかったけれど、豊久の低い声ははっきりと私の耳に届いた。
「信(ノブ)や与一は俺(おい)が大将ち言うたが
俺(おい)は一度もそがい思うた事は無か。
俺(おい)は所詮、功名餓鬼よ。
じゃっどん奴は違う。
第六天魔王織田先右府信長は違う!」
「違う………?」
「おう。
俺(おい)が主(ぬしゃ)相手に奸りばすれば
その間を食ろうて信(ノブ)が必ず潮目を変える。
その為なら俺(おい)は飛んでん跳ねでん
何でんするわい。」
土方歳三が息を飲んだ気配を感じた途端
「っ!」
彼は私の名を叫んだ。