第5章 Burning quintet
「………邪魔をするな、ラスプーチン。」
苦虫を噛み潰したような顔をして土方歳三が振り返ったそこには、オルテの議場で見たあのロシアの怪僧が厭らしい笑みを浮かべて佇んでいる。
「残念ですが、その漂流者(ドリフ)を嬲るのは
一旦中止でお願いします。」
「……………来たのか?」
「ええ。
土方が待ち焦がれた島津の登場ですよ。」
豊久が……来た。
その姿を思い浮かべただけで私の鼓動が高鳴る。
表情にもそれが表れてしまったのか
「どうやら島津を待ち焦がれて居たのは
土方だけでは無さそうですがね。」
目敏く気付いたラスプーチンが喉を鳴らしながら言った。
「面白く無い……が、まあ良い。」
そう言って土方歳三は漸く私の身体を解放する。
「待っていろ。
島津の首を此処へ持って来てやる。」
「豊久は………
貴方なんかに負けたりしない!」
私が強い口調でそう言い放ち土方歳三を睨み付けると、愉悦さを隠し切れないラスプーチンの笑い声が響き渡った。
「何と面白い。
土方が島津を倒す理由が一つ増えた様ですねえ。」
「………黙れ、ラスプーチン。」
土方歳三の憤怒がビリビリと伝わって来て身体が震えてしまう。
「これは失礼。
では、存分に島津と愉しんで下さい。
そして是非この娘の前に島津の首を。」
ラスプーチンに煽られた土方歳三の口角が僅かに上がり、そして私の全身に舐めるような視線を這わせて言った。
「ああ、そうだな。
島津の首の前で貴様を抱き尽くすのは
この上無く滾る事だろう。」