第5章 Burning quintet
私が何を言ったとしても、この人が救われる事は無いだろう。
そんな事は分かっているけど……
「これは……想像でしかありません。」
それでも私は、自分でも知らず知らずの内に言葉を紡ぎ出していた。
「私が知っている史実から、そう思うっていうだけで
貴方が求める答えとは違うかも知れませんけど……」
「構わん。
聞かせてくれ。」
土方歳三の真剣な眼差しに促されて、私は自分が思うままを滔々と語る。
「今、貴方が名前を出した方々は……
恨んでいないのだと思います。」
「恨んでいない?」
「はい。何も恨んでいない。
近藤勇さんは志半ばで斬首されてしまったけれど
自分の遣るべき事はここまでだと
後は貴方達に全てを託して、貴方達を信じて……
だから決して武士としては誉れでは無い斬首を
受け入れられたんじゃないでしょうか。」
「…………。」
盟友近藤勇の最期に想いを馳せたのか、土方歳三は悲痛に顔を歪める。
それでも無言でいる事で、まだ私の話を聞きたいのだと思えた。
「沖田総司さんは病死でした。
肺結核が悪化して、戦線を離脱した事は無念だったでしょう。
それでも最期は穏やかに……
敬愛していた近藤さんの死も知らぬまま亡くなった。
信じた人を、物を……信じたまま死ねるって、
貴方達としては幸せな事なんですよね?」
これで納得してくれたのだろうか。
土方歳三の目からは刺々しさが徐々に抜けていく。