第5章 Burning quintet
「………目覚めたか?」
目を開いてぼんやりと視線を漂わせていた私に向かって、低く抑揚の無い声が投げ掛けられる。
その声を聞いた途端、私は息を飲み慌てて自分の有り様を確認した。
「安心しろ。
貴様には何もしていない。
今はまだ……だがな。」
私から少し離れた場所に腰を下ろしている土方歳三はそう言って不適に笑った。
確かに自分の身体に異変は感じない。
只、僅かに痛む鳩尾が、この現状が夢では無い事を物語っている。
「………ここは?」
見た事の無い部屋を見渡しながら私は思い切って聞いてみた。
「カルネアデスの北壁……
オルテ北端の国境要塞だ。
俺達、廃棄物(エンズ)が堕とした。」
オルテ北端……私達が居たオルテ中心部からどれくらい離れているんだろう。
位置関係が全く分からない。
それから、豊久は………?
信長様や与一さん、サン・ジェルミさんはどうなったの?
「状況が分からず不安な様だな。」
土方歳三は刀の手入れをする手を休めないまま言った。
「あ……当たり前でしょ!」
そう語気を強めて答えると、彼の鋭い視線が私を捉える。
う……ちょっと言い方がキツかったかな。
怒らせちゃってたらどうしよう。
怯えて身を縮ませる私を見て、何故か彼は柔らかく微笑んだ。
「ふん……気丈な娘だ。
流石、漂流者(ドリフ)と言うべきか。」