第5章 Burning quintet
「を放せっ!」
豊久の怒号に漸く自分の状況を理解する。
私……捕まっちゃったんだ。
「それは出来ない相談だ。」
くつくつと喉を鳴らす土方歳三に間近から見下ろされ、私の背筋を冷たい汗が伝った。
「可笑しか芸を使うのう。
妖(あやかし)の術か何かか?」
「妖術では無い。
あれは俺の部下だ。仲間だ。
『俺達』と言っただろう?
薩摩に虐遇されたのは俺一人では無い。」
豊久の全身から怒りが涌き出るのを感じる。
土方歳三にはそれが堪らなく愉快みたいだ。
「穢いど。
人質など獲らず正々堂々勝負せい!」
「正々堂々……?
はっ……まさか島津の口からその様な言葉が出るとは驚きだ。」
ギリギリと歯を食い縛る豊久。
その背後には同じく臨戦態勢の信長様と与一さん。
そんな3人の様子に土方歳三は満悦さを顕にした。
「どうやらこの娘が貴様達の弱点なのだな。
良いぞ……もっと苦しめ。
貴様を今直ぐ斬り棄てる事など容易いが
それでは俺の積年の恨みが晴れぬ。
もっともっと苦しむ様を見せてくれ。」
「貴様(きさん)………」
怒りに震える豊久の声に、土方歳三は更にそれを煽った。