第5章 Burning quintet
「えらい恨まれておるのう。
聞けば俺(おい)らの子孫が
何か仕出かしてしもうた様じゃが……
我が家は心当たりが多過ぎての。
一々気にしてはおられんのよ。」
もう、どうしてそんなわざわざ挑発するような事を言うの。
愉しそうに語る豊久に、私はハラハラしっ放しだ。
当然土方歳三もそんな豊久を鋭い目付きで睨み付けている。
このまま斬り合いになってしまう……
そう思ったけれど
「………知っているのだな。
薩摩が……島津が『俺達』に何をしたのかを。」
土方歳三は豊久の挑発に乗る事も無く、落ち着いてそう話し出した。
「おう。
に教えてもろうたわ。」
「とは……新しく現れた漂流者(ドリフ)だな。
予言者だと聞いたが……」
「はそんな怪しかもんじゃ無か。
俺(おい)らより永く生きているだけぞ。」
「ほう……それは興味深い。
是非に『俺達』の話も聞かせて貰いたいものだ。」
その時……土方歳三の目が私の姿を捉えたような気がした。
彼は私の存在に気付いている………?
「やだっ!
何よコレッ!?」
突然聞こえたサン・ジェルミさんの叫び声に振り返ると、私の周りをゆらゆらと揺らめく靄のような物が取り囲んでいる。
その靄が段々と形を顕にしていき、そして私の目に映ったのは……
何着もの浅葱色の羽織。
「…………いやっ!」
私は小さな悲鳴を上げる。
「しまった!」
「さんっ!?」
その悲鳴を聞き付けた信長様と与一さんが扉を開けた瞬間、靄に捕らわれた私の身体は一直線に土方歳三の腕の中に運ばれてしまった。
「…………どうして?」
何がどうなったのか分からずオロオロとする私の肩を片腕でガッチリと拘束したまま土方歳三は呟いた。
「………手に入れた。」