第5章 Burning quintet
「とオカマ伯は奥の部屋へ入っておれ。
その部屋の前に俺と与一だ。
それで良いな、お豊(トヨ)。」
信長様の的確な指示が飛ぶ。
「応。
そいで俺(おい)が先陣じゃ。
土方は俺(おい)の首級よ。」
愉しくて堪らない子供のように笑う豊久。
何と声を掛ければ良いか分からず戸惑う私の身体をサン・ジェルミさんが押した。
「ほらっ……何してるのよ、。
さっさと部屋に入っちゃいなさいな!」
「は……はい。」
それでも後ろ髪を引かれるように躊躇する私に向かって豊久はニカッと笑って言う。
「、心配ばせんと大人しく待っちょれ。
土方の首をお前(まあ)への土産にしてやるど。」
そんなもの要らないけど……でも…………。
膨らみ続ける不安を何とか抑え込んで、私も出来るだけ何でも無い事のように笑顔を作った。
「うん。
待ってるね、豊久。」
そして私とサン・ジェルミさんが奥の部屋へ入った瞬間に、議場の扉が勢い良く開け放たれた音が響いた。