第4章 Crazy four
土方歳三は1869年に戊辰戦争最後の地、函館で狙撃を受けて戦死している。
確かに志半ばの非業の死だっただろう。
でもそれだけで廃棄物(エンズ)に?
あと考えられるのは……
盟友近藤勇を見棄てる形で斬首された事。
沖田総司や井上源三郎などの新撰組結成以前からの仲間を次々と失った事。
ううん、違う。
それは経緯だ。
そうなってしまう切っ掛けは……
戊辰戦争が始まってしまった切っ掛けは………薩長同盟。
長州藩は最初から揺るがず倒幕派だった。
その長州藩を諫める為に新撰組を抱える会津藩と協力していたのが薩摩藩だったのに、坂本龍馬の尽力で薩長同盟が締結されて薩摩藩は会津藩を裏切る形に……
そこまで考えて、私の背筋がゾクッと粟立つ。
当時の薩摩藩主は………島津茂久。
私は恐る恐る顔を上げ、豊久を見つめた。
それに気付いた豊久が「何ぞ?」と首を傾げる。
「ダメ……ダメだよ。
戦っちゃダメ。」
「はああ?
何言っちゃってくれてるの、。
そんな答えは認めないわよォ!」
震える声で訴える私をサン・ジェルミさんが激しく一喝した。
「だって……
だって土方歳三は薩摩を恨んでる。
廃棄物(エンズ)になってしまう程に島津を恨んでるんだよ。」
私の言葉に信長様と与一さんは息を飲んだ。
だけど豊久は一瞬の間の後……
凄く嬉しそうに、そして愉しそうに……笑ったんだ。