第3章 Triple fighter
その時、タンッ……と鋭い音がした。
豊久の身体の下でその音の方向へ顔を向けると、私を拘束している豊久の手の数センチ横に矢が突き刺さっているのが見えた。
「………与一か?」
そう呟いた豊久は私を組み敷くのを止めて身体を起こす。
「駄目だよ、お豊(トヨ)。
それはいけない。」
穏やかだけど、有無を言わせない声色で言った与一さんが近付いて来た。
「駄目なんか?」
「うん。駄目。
さんから離れて。」
「おう。」
豊久は素直にあっさりと立ち上がる。
豊久の重さと恐怖から解放されても、私は震えたまま動けなかった。
そんな私を与一さんがそっと抱き起こしてくれる。
「大丈夫?
怪我は無い?」
確認するように私の身体を擦る与一さん。
その間に然り気無く捲り上げられたままのワンピースの裾を下ろしてくれた。
「……怖かったね。」
「……………っ!」
与一さんが掛けてくれた言葉と優しい笑顔に、恐怖で凍り付いていた私の箍が外れる。
与一さんに縋り付いて溢れる涙をその胸に染み込ませた。
「戻ろう。
信長殿も心配してる。」
泣き続ける私を横抱きにした与一さんが歩き出すと、その後ろに拔が悪そうな豊久も続いた。