第3章 Triple fighter
「が言うよう事ならば
俺(おい)にも一つだけ思う所ばある。」
いつもは真っ直ぐ前を見ている豊久の目が、少しだけ遠くを見るように揺れていた。
そんな豊久の様子に違和感を感じ、私はそっと聞いてみた。
「何?」
「俺(おい)には子がおらん。
奥はおったが子は出来んかった。」
そうだった。
確か島津豊久には子供は居なかった筈。
「島津が永く続いたとに教えてもろうたが
その中に俺(おい)の血を引く者がおらんかったのは
ちくと残念じゃ。」
うん…そうだよね。
自分の血を引き継ぐ存在の大切さは、私が居た時代とは比べ物にならないだろう。
それにこの豊久がそれを口に出すなんて余程の想いなんだろうと私の胸も締め付けられる。
何て言えば良いのかな……
私を励ましてくれた豊久にどうにかお返しをしてあげたくて、真剣に言葉を探していると豊久の視線が自分に注がれているのを感じた。
ふと顔を上げるとその視線は舐めるように私の全身を這い回っている。
「………?」
不思議に思い首を傾げると豊久はズイッと私に近付いた。