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Indispensable~ドリフターズ~

第3章 Triple fighter


豊久と並んで座っている……それだけの事が何だか心地好い。

そんな気持ちになった事が急に照れ臭くなって、私はそんな雰囲気を誤魔化すみたいに話し掛けてみた。

「豊久は元の世界に未練は無いの?」

「未練?」

「うーん……後悔…とか?」

「そんなもんは無か。」

「そうなの?」

「此処が何処でどうなっているか何も知らん。
 だが俺(おい)は此処で生きちょる。
 だったら過ぎた事など悔やんでも仕方無か。
 俺(おい)は只、今を突っ走る事しか知らん。」

そう言った豊久は愉しそうですらある。

正直驚いたけれど、でもこれが豊久が豊久である所以なんだ…ってストンと納得出来てしまった。

「豊久は……凄いね。」

私は感じたままの想いを口にした。


「は後悔しちょるのか?」

豊久から逆に問われて、私の想いなんて本当に些細な事なんだろうなって恥ずかしくなったけど……

でもちゃんと伝えたくて私は素直に答える。

「後悔とは違うのかもしれないけど…
 もっと勉強したかったし、行ってみたい所も一杯あったな。
 それに友達や家族にもう会えないのかな…って。」

そう、ちゃんとお別れも言えないままこの世界に飛ばされて来ちゃったから……。

心配してるだろうな。

会いたいな。

自分で答えておいて、その答えに打ちのめされる。

泣いてしまいそうになるのをグッと堪えていると

「俺(おい)がおる。」

豊久の力強い声が響く。

「信(ノブ)も与一もおる。」

………それって、私を励ましてくれてるんだよね?

「ふふっ……」

余りに不器用な豊久の優しさに私は吹き出してしまった。
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