第3章 Triple fighter
うん、良い人なんだよね。
この人は関ヶ原の戦いで主君を逃す為にあっさりと命を捨てた人。
『捨て奸』
それが島津家の戦法なんだけど、そんな事を当たり前に出来る人と私とでは根本的に何かが違う筈なのに……。
信長様や与一さんだってそう。
だけどこうして私を1つの蟠りも無く、1人の人間としてちゃんと接してくれる。
違う……なんて思ってるのは私だけなのかもしれない。
どんなに有名な歴史的偉人だって、平成を生きる私達と何も変わらないのかもしれない。
そんな事を考えながら膝を抱えていると、豊久はまた私の頭をくしゃっと撫でる。
驚いて顔を上げると、豊久は優しい目をして私を見ていた。
「ジェルミはああ言うちょったが、
は戦う必要は無か。」
「え……でも…」
「戦場(いくさば)は男の領域ぞ。
女子(おなご)のお前(まあ)は
紅でん付けて只々笑っておれ。」
これって…平成の世で言えば所謂男尊女卑、セクハラだとかパワハラだとか大騒ぎされそう。
だけど豊久は豊久の理の中で当たり前の事を言ってるだけなんだ。
私の頭に置かれたままの豊久の大きな手から、その想いが温もりと一緒にしっかりと伝わって来る。
「ありがとう……豊久。」
そして私は自然に微笑んでいた。
「おう。
がそうやって最後まで笑っておれば
それが俺(おい)らの勝ち戦ぞ。」