第3章 Triple fighter
百年戦争を戦ったフランスの軍人。
フランス国家の為に命を懸けて戦ったのに、その後異端審問にかけられて19歳で火刑に処せられた女性。
………そりゃ、この世を恨んでる筈だよね。
サン・ジェルミさんが説明してくれた廃棄物(エンズ)の定義が何となく理解出来た気がする。
そんな人達がまだ居るの?
「それにしてもトヨちゃんってば
どうしてジャンヌを殺さなかったのよォ。
生かして逃すなんてマズイわよ。
また面倒臭い事になっちゃうじゃない。」
え……豊久さんはジャンヌ・ダルクを殺さなかったの?
「まあ、頭蓋を割られた様でしたので
ほぼ再起不能だとは思いますがねー。」
与一さんが含み笑いをしながら豊久さんを擁護した。
あ、結構酷い事はしたんだ。
「女首は手柄では無か。
恥じゃ。」
その声に顔を上げると、サン・ジェルミさんの目前に立ちはだかった豊久さんが腕を組んで胸を張っている。
「そんな悠長な場合じゃないでしょォ?
女だろうと廃棄物(エンズ)は殺しておかないと
いつまで経ってもオルテが奪れないじゃないの!」
「主(ぬしゃ)の法度など知らぬ。
俺(おい)は女首は取らぬ。
これが俺(おい)の法度じゃ。」
全く澱み無く、清々しい程に言い切る豊久さん。
その姿がちょっとカッコイイ……なんて思ってしまう。
「はいはい。
トヨちゃんには何を言っても無駄だわね。」
サン・ジェルミさんは呆れた様に肩をすくめ、今度は信長様に向き直った。
「この融通の利かない総大将様を上手く遣って
さっさとオルテを奪っちゃって頂戴。
呑気にしてる場合じゃなくってよ!」
「怖いのう……オカマ伯は。」
くつくつと笑う信長様は、ヒステリックに捲し立てるサン・ジェルミさんなどまるで気にしてないみたい。
そんな信長様の態度にサン・ジェルミさんのボルテージも上がってしまう。