第14章 DESTINYー運命ー
結局、大学には休学届を出して、両親も説得した。
最初は「相手を連れて来い」と大騒ぎしていた父親とも長い時間を掛けて話し合い、結果今ではこの子が生まれて来るのを楽しみにしてくれている。
本当の事を知ったら卒倒しちゃうかもしれないな…。
自分の初孫の父親が戦国武将だなんてね。
「この子のね、性別は聞いてないんだ。
生まれて来るまで楽しみにしようと思って。
でも最近、凄くお腹の中で暴れるの。
だからきっと豊久に良く似た男の子だと思う。
どう…嬉しい?」
こんな風に語り掛けたって、豊久がここに居ないのは分かってる。
だけど戻って来たこの世界では、貴方はやっぱりここで亡くなった事になっていて……
そうならもう、私はここに来るしか無かったんだ。
「信長様は土方さんを救う為に
私があの世界に遣わされたって言ってくれたけど
でも、私はね……
この子を身籠る為だったんじゃないかって思ってるんだ。
豊久の子を……
豊久の血を繋ぐ為に私が選ばれたんじゃないか…って。
ちょっと、図々しいかな。
だけどそうだったとしたら……凄く嬉しいの。
本当は貴方の側で産めたら良かったんだけど、
きっとそれじゃ意味が無いんだよね?
ここで……ここから先へ繋いでいかなくちゃいけないんだよね?」
どんなに問い掛けたって、答えなんてある筈がない。
そんな事は分かってるけど……
これは自分を納得させる為の言葉なんだ、きっと。
「だから私、頑張るね。
この子をちゃんと産んで、立派に育てるよ。
武将にはしてあげられないけど…それでも豊久と同じ
誰よりも強くて優しい子にしてみせるから……。」
少し強くなった風が、石碑の前で屈み込んだ私の髪を乱す。