第13章 AFFECTIONATEー深愛ー
壁に手を添えて重い足をズルズルと引き摺るようにして歩く。
痛みなんか分からない…そう思っていたけれど、今は下腹部の微かな鈍痛だけはしっかりと感じていた。
この鈍痛は豊久が私の中に吐き出して与えてくれた痛み。
そんな痛みすら愛おしいなんて……本当に重症だな、私。
さあ、もう直ぐ廃城を出られる。
だからお願い……もう少しだけでいいから……持ち堪えて、私の心臓。
「何処へ行く?」
突然掛けられた声に身体を強張らせる。
振り向いた先に立っていたのは信長様だった。
「………信長様。」
「何処へ行くというのだ、。
此処に居たいと言ったのはお前であろう……ん?」
その優しい声色が、逆に酷く叱られているような気がした。
「ごめんなさい……私…」
そして私も父親に叱られた子供みたいに項垂れてしまう。
「理由を聞かせてくれぬか?
が自らお豊(とよ)の側を離れるなぞ、
余程の想いだろうからの。」
「……………嫌なんです。」
「嫌?」
「動かなくなった自分の姿を豊久に見せるのが……
嫌なんです。」
私の言葉に信長様が息を飲むのが分かった。
「、まだ死ぬると決まった訳では無いぞ。
それこそ今こうやって無茶をすれば、そっちの方が………」
「分かるんです。」
私は強い口調で信長様の言葉を遮る。