第12章 REUNIONー再会ー
「信(ノブ)、与一……を頼むど。
俺(おい)は、彼奴だけは許す訳にはいかん。
切り刻まねば気が済まん。」
次に聞こえたのは、身が凍る程の怒りを孕んだ豊久の声。
その燃えるような視線の先へ私も目を向けてみると……
そこにはまだ、ラスプーチンがニヤニヤと卑屈な笑みを湛えて佇んで居る。
逃げもせず、再度攻撃を仕掛ける訳でも無いラスプーチンの姿を見て私は思った。
ああ…彼が狙っていたのは豊久じゃなくて、私だったのかもな…って。
だから私は、立ち上がり掛けた豊久の襟元をぐっと掴んだ。
「嫌だ…行かないで。」
「……。」
「お願い。
もう豊久と離れたくないよぉ……。」
私の懇願に豊久は明白に躊躇する。
「ね、逃げよう…一緒に。
豊久……私を連れて逃げて。」
「おう!そうじゃ、お豊(トヨ)。
ここは一つ、さっくりと綺麗に逃げようぞ。
いや、逃げるのでは無い。
これは意味の在る『撤退』じゃ!」
「うん、そうしよう。
さんをこのまま此所に置いておくのは得策じゃない。」
「じゃっどん……」
信長様と与一さんの提言を受けて、更に豊久の心が揺れ動くのを感じたその時……
「……逃げろ、島津。」
私達の横を端然とした足取りで通り過ぎた土方歳三だった。
そして彼は一度だけ歩みを止め、振り向く事無く言った。
「ラスプーチンとは俺が方を付ける。
……………………………………。
……を、死なせるな。」