第12章 REUNIONー再会ー

再び渾身の力を振り絞って身を捩ると、流石に土方歳三も紫電改の存在に動揺しているのか、思いがけず簡単にその腕から脱け出す事が出来た。

長身の土方歳三の肩から地面に落とされた私は俯せに倒れ込み、全身に走る痛みに顔を顰めたけれど……

これは絶好のチャンスだ。

そして直ぐ様駆け出すべく立ち上がろうとした私の背中を

「……………っっ！」

土方歳三の片足が踏み付ける。

「…………何故だ？」

まるで地面に押し潰された虫みたいに私は無様に藻掻いた。

そんな私を見下ろす土方歳三の目は凍えてしまいそうな程に冷たい。

「何故、誰も彼も……
　俺から貴様を取り上げようとするのだ？」

駄目だ。

独り言のように呟く土方歳三の想いに引き摺られてしまいそう。

だけど……私は逃げなきゃ駄目なんだ。

何とか脱け出そうと身を捩れば捩る程、私を踏み付ける足の力は強くなって行った。

お腹が圧迫されて苦しい。

呼吸も上手く出来なくて視界が霞んでしまう。

「貴様も俺の手中から逃れようと言うのだな？」

その台詞を聞いた時、私は初めて死を意識した。

それ程までに土方歳三の声は冷たかったから。

自分の物に成らないのであれば殺してしまえばいい……

そう言われているのと同じだと感じたんだ。

恐怖と無念さで私の両手がガリガリと地面を掻き毟り出したその瞬間、紫電改の飛行音すら凌駕する怒号が響き渡った。



「そん汚なか足を、今直ぐの背から退かせいっ！！」