第9章 Blue Velvet~那須与一~
その後、「為らば俺(おい)も無茶はせん」と約束してくれたお豊(トヨ)の拘束を解いた。
そして北方から戻って来たオカマ伯も交えてこの先の戦術を話し合う。
侃々諤々の議論を交わし、それでも最良の方法が思い付かない。
色々と考え過ぎて疲れきった頭を休ませる為に、僕はまた一人で廃城から出て彷徨いていると
「与一。」
背後から呼ばれたその声にぞわりと悪寒が走った。
「やはり……。
貴方も『こちら』に飛ばされていたのですね。」
僕は平静を装い、振り向いてからゆっくりとその名を口にした。
「義経様。」
「あはっ……やっぱり気付いてたんだ?」
その人は相変わらずの少年の様な笑みを浮かべて立って居た。
だけど僕は彼の内から溢れ出る邪悪さを全身で感じ取っている。
「私の予感は当たるのですよ。
特に『嫌な予感』は……。」
「ふふん……言うねえ。」
義経様は愉し気な様子を隠しもせず僕に近付く。
「貴方がさんを拐った……そうですね?」