第4章 3 玉章と七つの影
次の日。月曜日。
リクオはいつものように学校へと駈け出して言った。
「いってきまーす。」
「いってらっしゃい。」
「あ、待ってください。若~!!」
にこやかに手を振る若菜と、すでに小さくなったリクオの後を追いかける氷麗と青田坊。
三人がいってしまうと、若菜はとあるふすまの前で声をかけた。
「開けてもいい?」
「…あ!どうぞ~。」
若菜がふすまを開けると、全身鏡の前で服装をチェックする紫苑。最後に長い黒髪を巫女のように白い髪紐で止めると、若菜を振りむいた。
「どう?きちんとなってる?」
「なってるなってる。」
紫苑が今着ているのは、リクオの通う浮世絵中学の制服。
「あ、そうだ。リクオにお弁当届けてもらってもいいかしら?あの子ったらまた忘れて…」
紫苑は若菜が差し出したお弁当を受け取ると、鞄の中に入れた。若菜の手にはもう一つ包みが握られている。
「これ、紫苑ちゃんの分。」
「ありがとう。…それじゃ、行ってきます。」
「気をつけてね。」
「は~い。」
後ろ手に若菜に手を振りながら部屋を駆けだす紫苑。朝の光の中を学校へと向かって爽快に走り抜ける。