第3章 神の率いる百鬼夜行
「…いっそけなされた方がすっきりするかしら。」
「そうか。遠慮なくけなさせてもらうぜ。…バカにしてんのか、てめぇ。選べないなんて言い訳は言うもんじゃねぇ。選べねぇんじゃなくて、選らばねぇだけだろーが。そんなんで、よく総大将やってられんな。優柔不断なんだよ、てめぇは。」
黙ってリクオの乱暴な言葉に耳を傾ける紫苑は、ふと、髪を指ですくい上げ立ちあがった。
花びらがふわっと舞いあがり、美しく夜の暗闇に輝く。
「…ん…すっきりした。ありがとう、リクオ。吹っ切れることができたわ。優柔不断ね…言ってくれたじゃないの。」
「お前がけなせって言ったからだろ。」
口をとがらせて文句を言えば、紫苑は悪気もなく笑う。しかし、その笑みはいたずらではないと直感できた。
「あなたは決まらないの?三代目継ぐか継がないか。」
「俺は…まだ継ぐと決めたわけじゃねぇ。だが、若頭は務める。杯を交わした仲だしな。俺は、魑魅魍魎の主となる。」
「それはもう、三代目を継ぐと決めたようなもんじゃないの。魑魅魍魎の主…か。似合ってるじゃない。」
「バカ言え。お前もだろうが、四代目。俺の下に付く器じゃないだろう。」
「ふふ。器の問題?」
桜の下で交わされる二人の会話。まるで絵のように、そしてどこか怪しげな物語の一幕のようにその姿を月に輝かせている。
互いに長い髪をなびかせて、その桜をまといながら、二人の会話がいつまで続いたのか知るのは怪しく光る月のみであろう。