第3章 神の率いる百鬼夜行
「…綺麗だな。お前の両親。」
紫苑はゆっくり顔を上げると、深く息を吐いた。言葉は出てこず、リクオの顔も見れず、静かにうずくまる。
「憶えてるんだ。親父が死んだ時の事。」
「……」
「あんときはガキで、全く分からなかった。自分が何者かも。」
「……」
「いいじゃねぇか。お前の両親がいたからお前は此処にいる。俺だって親父がいたから此処にいるんだ。気に病むことはねぇ。」
「……人間として、生きたいと言ったらしいわね。」
「今もさ。」
「…羨ましいわ。私はお父様が人間だったとはいえ、半分は妖怪。いえ、もしかしたら三分の二が妖怪なのかもしれない。そんな私に生きる道は妖怪としての道しかなかった。人間か妖怪か、選べる貴方がむかつくくらい羨ましいわ。」
返す言葉が見つからずリクオは紫苑をにらみつける。紫苑はその視線を感じながらも顔はあげず、ただリクオが内心怒っていることにだけ意識を集中させていた。
「慰めの言葉がいいか。それとも、けなされた方がいいか。」
突然そう聞かれ、紫苑の瞳が揺れた。